間もなく90才を迎えられるMさんとTさんは、県庁職員時代の同僚です。今日、偶然お二方のお取り越しでした。遠く離れて、「Mさんは元気ですか。」「Tさんは元気ですか。」という話題。
それぞれの家で、昔話が盛り上がりました。そんななか、Tさんが、こどもの頃の仏さまのお給仕の思い出を懐かしそうに語られました。
Tさんは、仏様のお給仕のこと、お荘厳のことを『ごっつぉおする』と言われます。「ごちそうする」の訛りだと思います。その『ごっつぉおする』思い出のひとつが、『おなべさま』です。
『おなべさま』。はじめて聞きました。
『おなべさま』とは、お仏飯を炊く専用の鍋のことだそうです。それは、一合ほどのお米を炊くようにできている、つるのついた小さな鍋で、毎朝、「くど」の茶釜でお茶を沸かすとき、焚き口から漏れる火にかざして、お仏飯を炊きあげるのだそうです。
普段食するのは割れたお米でも、『おなべさま』で炊きあげるのは選って粒のそろったお米。子ども心に、『おなべさま』で炊いたご飯がおいしいことが判っていたので、お仏飯を食べるのが楽しみだったと言われます。
当たり前のように、人が仏さまといっしょに暮らしていた時代が確かにあったのです。そのことが、80年も経った今、生き生きと語られることの意味を大切にしなければと思います。
「今」の80年後も、必ずおとずれます。
Photo
『おなべさま』の写真がないので、
「お仏飯器入れ」。
やたら重い。
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『西蔵坊だより』は、 森鏡山 正蓮寺の住職の日記です。
仏教のこと、山や川や海のこと、TIBETのこと等、思いつくまま書いています。
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