エクスプローラーとアルピニスト
映画「UDON」を観て以来、エベレスト関連の本を読んでいます。

エクスプローラーとアルピニスト_b0029488_3201016.jpg


1953年、エベレストに初登頂したイギリス隊のニュージーランド人、エドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイが、ともにロレックス社の腕時計をしていたことは、有名な話だそうです。

ヒラリーがつけていたのは、エクスプロラー(探検者)と名づけられたモデルであったといわれていますが、テンジンについては、正確なことはわからないようです。

ジャムリンテンジン・ノルゲイの著作『Touching My Father's Soul』に、興味深い記述がありましたので引用します。ジャムリンテンジンはテンジン・ノルゲイの次男で、1996年のIMAX登山隊の一員として、エベレストに登頂しています。

・・・〈サウス・コル〉から頂上まで、直線距離なら、わずか2キロ半だが、私たちの平均速度は、毎分3メートル半・身長にすれば二人分。赤ちゃんのはいはいだって、もっと速い。

 ・・・いま目にすることの出来る世界は、ヘッドランプが放つ円錐形のなかに限られるし、聞こえる音と言えば、自分の唱える真言の、自己催眠を起こしそうな声と、酸素マスクの内側に響く深い呼吸音だけ。

 ・・・手首に巻き付けた、母の形見の念珠が、今では冷たく肌に触れている。もう片方の手首には、ロレックスの腕時計をはめている。これは、父が、オーストリアの冒険家、ハインリッヒ・ハラーからもらったもので、1940年代に二人がラサで過ごした記念の品なのだ。

第2次世界大戦中、当時"禁断の国"といわれたチベットに潜行した数少ない西洋人で、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の著者、ハインリッヒ・ハラーとテンジン・ノルゲイは、ラサで偶然にであい、時計を供するほどの親交を持っていたというのです。ハラーが、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』を著す前、テンジンがエベレストに初登頂する前のことです。ヒマラヤの山々をめぐる歴史の綾のようなものを感じます。

◆ハラーとテンジンの交友の話は、日本のサイトのなかには見つかりませんでした。上記以外の情報がないので、想像するばかりですが、ヒマラヤを挟んで北側・チベットに滞在したハラーと南側・ネパールからエベレストをめざしたテンジンが、稀にも出遭っているということ。チベット圏は、実はすさまじく狭い線なのかも知れません。

エクスプローラーとアルピニスト_b0029488_119106.gif

写真は、傷だらけのSEIKO・Alpinist(アルピニスト)。
"チベットには、はめていかない方がいい"と言われて、岐阜に残った軟弱ものです。
この先、どんな歴史を辿ることやら・・・。


【追記】 

エベレストに初登頂したロレックスの時計についての記述に、誤りがありました。

ヒラリー氏は、登頂時ロレックスの時計をはめていなかったというのが定説だそうです。また、ロレックス社のエクスプローラーという時計は、エベレスト初登頂後、そのイメージを踏襲したモデルを、ということで製品化されたモデルだそうです。

詳しくは、Any Way You Want It:『エベレストとロレックス』をご覧下さい。


                    【 1年前の今日のblog
                    【 2年前の今日のblog



..................................................................................................................

 よ う こ そ 『 西 蔵 坊 だ よ り 』 へ

エクスプローラーとアルピニスト_b0029488_22514638.gif『西蔵坊だより』は、 森鏡山 正蓮寺の住職の日記です。
仏教のこと、山や川や海のこと、TIBETのこと等、思いつくまま書いています。
よろしければ、TopPageより、ゆっくりご覧ください。

                    『西蔵坊だより』TopPage

by e.wash-r | 2006-10-22 00:18 | Tibet/西蔵 | Comments(2)
Commented by 富士山 at 2008-01-26 01:05 x
西蔵坊さま

当ブログへのご訪問ありがとうございました。
貴重な情報をいただき感謝しております。

時を計るものだけに歴史が刻まれていくというか、色々と調べていくほどに新たな発見があり興味が尽きないものです。

赤文字ロゴのセイコーアルピニスト、いいですね。
メンテナンスも当分の間は心配ないでしょうから、タフな歴史をしっかりと刻みつけていってあげるのがよろしいかと・・・
Commented by e.wash-r at 2008-01-29 00:43
ジャムリン・テンジン・ノルゲイ氏の著作を読み直してみました。以前の記事と同じような内容ですが、「エベレストについて -再記と追記-」としてUPしてみました。

もう少し真相に近づいたのではないかと思いますが、曖昧な方がいいような気もします。


富士山さま

<< ちょっとうれしかったこと -ミ... 号外    -美しさとは?- >>