岐阜市椿洞で小熊が捕まりました。我が家から、山をひとつ隔てて、直線距離でおよそ3Kmほどのところです。
「親熊がまだ見つかっていないので、注意するように!」と、娘は、学校で指導されたそうですが、どうすればいいのか、かなり難問です。
ずいぶん昔、立山から槍ヶ岳までを、一週間くらいかけて縦走しました。夏の終わりということもあり、ほとんど人に出逢いませんでしたが、たまたま、ザラ峠ですれ違った人に、「スゴ乗越は熊がでるから気をつけて。」
と言われました。
スゴ乗越は、立山と薬師岳の間にあり、北アルプスの中でも最深部にあたります。
スゴ乗越の野営指定地に着いたのは、夕方。他には誰もいません。近辺を一回りした後、テントは、ゴミ処理用に掘った大きな穴のそばに張ることにしました。その時は、一応、夜、熊がゴミをアサリに出てくることを予想し、そっと覗いてやろうと考えたのでした。
食事を作って食べ、あっという間に寝てしまったのだと思います。そして、いつ頃なのか全くわからない夜中、ハアハアという大きな息づかいで目が覚めました。
テントの薄いリップストップナイロンの生地を隔てて、ほんの数十センチか数メートルのところに熊がいる、のです。
このことは、当初は望んだ状況だったはずでした。でも、現実になると、ただ恐怖のみ。体が凍りつく、という表現がありますが、まさにそうでした。寸分も動かないように息を潜めていたのか、硬直して動けなかったのかさえわかりません。5分なのか5時間なのかもわからない長い長い時間が過ぎました。
恐怖の中、それでも寝入ってしまったような、眠ることができないままだったような、そんな状況で迎えた朝。
テントから山小屋へとつづく登山道に、ヘリコプターで運搬するように金網に梱包した空き缶の塊りが転がっていました。「また熊がわるさをした。」と、山小屋の方は、笑っておっしゃいました。
写真は、小熊が捕まった椿洞。いつも、おまいりの時通る場所です。懲りもせず、どこかで黒いものが動かないかなあと思いながら、日々、車を走らせています。