突然、長女の記憶が消えました。
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突然、長女の記憶が消えました。

昨日の朝、学校でめまいを起こし倒れたそうです。
保健室で目が覚めたとき、長女の12月9日以降の記憶はすべて消えてしまっていました。

前日、みんなで盛り上がった正尊寺さんの忘年会のことも全く憶えていません。
一面の大雪を見てびっくりする有様です。
最近変更した携帯電話のパスワードも覚えていません。
買ってもらったばかりの靴を見て、なぜあるのか不思議そうにしています。
大切なフルートもどこに持っていったのかわからないようです。
たぶん、受けたはずの授業の内容もまったく消え去っていると思います。

話を聞いて、うっすらと思い出すということもなく、12/9~12/27までの記憶が完全に消えているのです。ボク自身、彼女と接していて、テレビか映画のドラマの中の話ではないかと錯覚するほどです。

記憶が消えてしまったということ、今が本当は、もう12月の終わりだと言うことが理解できたとき、彼女は呆然と泣きました。12/9の時点で、楽しみにしていた演奏会やともだちとの約束が、既に終わっているということをどう受けとめていいのか、戸惑っているようです。

ボクたちは、今を生きています。そして、今が、連綿と続く過去の上に成り立っているということに、なんの疑いも持っていません。記憶は、ある意味、前提として当然存在していると思っています。

当たり前と思っていたことが、そうではなかったのです。

今、ボクたちが日夜していることが虚構だとは言いません。
しかし、こんなことを考えました。

仏への道・浄土への道を歩んでいるとして、もしそれが、我が善行や修行・勉学の積み重ねによって成り立つものであるとするなら、その積み重ねた過去を頼る人間の危うさを思わずにはおれません。

"我が行為が、浄土への頼みにならないということ"を、"念仏の衆生を摂取して捨てぬと、十方世界を遍く照らす如来の光明の、その救いの確かさ・尊さ"を、あらためて思い知らされたできごとでした。

煩悩具足の凡夫、火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもつてそらごとたはごと、まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします。   
                                   『歎異抄 後序』


とはいえ、家宅無常の世界も、実に魅力的です。

消えてしまった18日間を、取り戻すのはきっとムズカシイ。でも、このことで得たものの方が大きいかも知れない。そう思います。




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突然、長女の記憶が消えました。_b0029488_22514638.gif『西蔵坊だより』は、 森鏡山 正蓮寺の住職の日記です。
仏教のこと、山や川や海のこと、TIBETのこと等、思いつくまま書いています。
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by e.wash-r | 2005-12-28 19:07 | そらごと、たはごと | Comments(2)
Commented by 雨伝 at 2005-12-29 00:33 x
TVドラマみたいな事があるんだなぁ~
今日彼女と会って、どう話していいのか戸惑いました。
空白の2週間一緒に生活していたご家族のとまどいは大変なものだったでしょう。
お疲れ様です。

けれど、それをご法義と結びつけブログにされるところは、さすが坊さんですね。
Commented by e.wash-r at 2005-12-29 02:25
当方、当日は、何も手につかないような状況でしたが、今は落ち着いています。

せっかくおいしいご馳走をいただいたのに、アノ時の味の記憶はなくなっているわけで、さらに戸惑うのは、それでもアノご馳走が彼女の血となり肉となっているという事実です。

長女ともども、またご指導を!。
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