ホモ・デルフィナス  -されど、十方衆生-

こどものつきあいで古本屋へ行った坊守が『沖縄式風力発言』という池澤夏樹さんの講演録を買ってきました。

「ジャック・マイヨールのことが書いてあったよ・・・。」
と言う坊守のすすめで、『ジャック・マイヨール』という30ページほどの1編を読みました。

映画『グラン・ブルー』の熱狂的なファンの方、フリーダイビングに興味のある方、イルカの好きな方、ご一読をおすすめします。
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ボクが、なんとなく共鳴したところを少し紹介します。

・・・ジャン・ジャック・クストーという男が、、アクアラングを発明して、それが世界中に普及しまして、誰もがちょっとしたトレーニングだけでライセンスを取って潜れる。そう言う意味で海の中の世界というのは、戦後になって格段に大衆化したわけですね。

・・・それに対して、ジャック・マイヨールは、ひとはそのまま海へ潜れる、イルカと同じように水の中を動けると言う。我々が持っているのに忘れていた能力を思い出させたわけです。

・・・「どうしてあなたはタンクを背負って潜らないの?」と、ぼくは真っ正面からジャックに聞いたことがあります。そしたら、「あれは優雅じゃないから」とかっこいい返事が返ってきました。

・・・つまり、そういうものに頼っているのは美しくない。自分一人でマスクとシュノーケルとフィンだけでいくほうがずっと自分らしいと思ってるんでしょうね。



長良川河口堰の反対運動で知り合ったTさんに連れられて、20年ほど前、はじめて"タンクを背負って"海に潜りました。越前の海です。

「浮上してくるとき、自分の吐いた空気の泡より速く上がらないように・・・」と言う注意だけ受け、理論も知らず、トレーニングもしないで、いきなり石をだかされて水深35メートルの海の中へ落ち(潜り)ました。

測線をキラキラ紫色に輝かせて目の前をマダイの子どもが泳いでいきました。海の中を悠々と、息を止める苦しさから解放されて漂う至福。

スキューバはスゴイと思いました。でも、自由に海の中を泳いでいるようで、実はロボットみたいな装備がなんとなく煩わしいとも思いました。

スキューバでしか体験できない世界があり、優劣をつけるものではありませんが、ボクも、素潜りの方が楽しいと思っています。生意気を言うようですが、ジャック・マイヨールのことばがなんとなく分かるような気がするのです。



2001年、ジャック・マイヨールは自殺しました。ボクに限らず、衝撃を受けた人は多かったと思います。

優雅に潜り、イルカの脳と語り合ったホモ・デルフィナス、ジャック・マイヨールも、苦悩から解放はされなかったという現実。人間の限界、生々しい姿を見る思いです。


【ホモ・デルフィナス】  イルカ人間。 ジャックマイヨールの造語。





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ホモ・デルフィナス  -されど、十方衆生-_b0029488_22514638.gif『西蔵坊だより』は、 森鏡山 正蓮寺の住職の日記です。
仏教のこと、山や川や海のこと、TIBETのこと等、思いつくまま書いています。
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                    『西蔵坊だより』TopPage

by e.wash-r | 2007-01-19 23:59 | 溺レル | Comments(3)
Commented by ucchee at 2007-01-21 15:39 x
私もです。以前一度だけダイビングにトライしましたが、背中のタンクの重さに嫌気がさし、それ以来やっていません。
シュノーケルは大好きです。私もwash-rさんと同感です。
Commented at 2007-01-22 19:16 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by e.wash-r at 2007-01-23 01:36
実は、優雅に潜ったということがありません。血走って、酸素不足の苦しさと戦いながら潜っています。(E師談)

海にしろ川にしろ、潜った瞬間に、トキメクと言うか血が騒ぎますよね。たぶん狩猟民族の血が。

黒潮の洗う太平洋岸もいいと思いますが、日本海もいいですよ。

uccheeさま


『とにかく、海(川もね)に入らないことにはそうした世界も覗けないわけで、いろいろやりくりして、シーズンに何度かは、マイヨールor無人島サバイバルすることが大事です…ということですね。ネットで文字だけ踊っているのはね・・・』
という【鍵さま】のご指摘、ごもっとも。もう少しあたたかくなったら、気合い入れましょう。

鍵さま

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